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皇帝シャルル・ジ・ブリタニアの筆頭騎士ナイトオブワンと、インペリアルガードを指揮するナイトオブトゥエルブを残し、占拠された政庁を開放すべく、ブリタニアの総力を挙げテロリストに一斉攻撃を仕掛けた。 それに反発したのは中華連邦を始めとした国々で、自国の首相を人質としたテロリストと、政庁を抑えたテロリストが同じ組織である可能性がある以上、下手な刺激はするなと、ブリタニアと対峙する形で兵を出してきた。 政庁を一斉に解放し、首相を救出するという作戦を告げても、日本で捕えられたのは我々の国のトップで、ブリタニアだけは違う。だから、自分の子である三人よりも、国を取り戻すほうを優先させているだけだろうと主張してきた。 確かに第一皇子が捕えられはしたが、所詮皇帝の数多くいる子供の一人にすぎない。代わりなどいくらでもいる。各エリアで捕えられた者も皇帝の子供。どうせ救うならば、国も共に救う方がいいと考えたに違いないと、元々侵略戦争を行ってきたブリタニアに、いい感情など持っていなかった各国は、一気に反ブリタニアの意見に飲まれた。テロリストに攻撃を仕掛ければ、敵対行動とみなすと宣告し、各エリアの政庁を攻撃するのは、我らの国の首相を取り戻してからだと主張した。気がつけばブリタニアと各国は銃を向け会う構図となっていた。 「これが、狙いだったのね」 マリアンヌは画面を睨みつけながら言った。 今世界は、二つに分かれていた。 ブリタニアと、ブリタニア以外の国と。 テロリストを殲滅したいブリタニアと テロリストを刺激したくないその他の国と。 テロリストはただ沈黙を守るだけで、戦火は広がって行く。 「取り戻せたのは、エリア2だけとは」 情けないというべきか、良くやったというべきか。 エリア2制圧を命じられたナイトブセブン枢木スザクは、鬼神のごとき働きで、瞬く間に政庁を取り戻した。あまりにも早い動きに、テロリストだけでは無い、味方でさえ翻弄され、気がついた時にはテロリストの部隊は殲滅していたのだという。 ブリタニア軍が政庁内へ突入し、捕えられていた皇族と、ナイトオブテンも無事に救出した。新参者の日本人に救われた事が気に入らないらしく、衰弱しベッドに横たわるナイトオブテンは、俺を戦場に出せ、セブンと同じ戦場にだ!と騒いでいる。 こちらの黒星はそれだけ。 他のエリアは制圧出来ず、他国も動いた事で膠着状態が続いていた。 テロリストたちを捕え尋問しているが、誰ひとり全体を把握している者はいなかった。彼らのトップ、テロの首謀者が全ての指揮を取っていたという事、そして彼らの騎乗するKMFのシステムは、解析が不可能になるほどの強力なコンピューターウイルスによって停止していた。 「マリアンヌ様、先に兄上たちの救出をしなければ、エリアの解放は不可能ではありませんか?」 頑なにエリア解放を優先しているマリアンヌに、シュナイゼルは進言した。 「それは解っているわ。でも、妙じゃない?」 「妙、とは?」 マリアンヌの言葉に、シュナイゼルは眉を寄せた。 「あの戦艦よ。見てごらんなさい。あんなに堂々と、護衛も何もなく一隻だけで空に浮いてるのよ?狙ってください、攻めて来てくださいと言っているようにしか見えないわ」 海上に、堂々とその姿を見せているテロリストの戦艦。 各国首脳を捕えている場所。 しかも、現在ブリタニアで開発中のフロートシステムを使用している、最新鋭の戦艦。ブリタニアの技術が流れているなら、ブレイズルミナスも完備しているだろう。 たとえそうだとしても、あまりにも無防備な姿だ。 マリアンヌのいう事は解っている。 シュナイゼルも、あの戦艦を攻める事は愚策だと思っているのだから。だが、現状を打開するには、その餌に飛びつくしか道はない。 「虎穴に入らならければならないのは解っているけれど・・・、いえ、やるしかないわね。迷っていることさえ、相手の思うつぼだもの」 「では」 「総力をあげて、あの戦艦を落とすわ」 「兄上たちはどうするおつもりで?」 「生存確率は出来るだけあげるわよ?・・・私の娘と息子もあの中にいる事は忘れていないわ」 「では、そのように」 全ての戦力を、あの場所へ。 そのブリタニアの動きが次なる悲劇へのトリガーとなった。 |